堺正章の出演映画 その2
続けて、堺正章である。
64年に舟木が出演していない作品で、堺が出演したのが大映の「幸せなら手をたたこう」である。主演は宇津井健、姿美千子、倉石功、滝瑛子などで、主題歌を歌う坂本九も出演している。堺の役はクリーニング屋の店員で、「夢のハワイで盆踊り」でも共演した高橋元太郎も顔を出している。
65年になっても、舟木一夫とのセット出演は続いており、舟木のギャラ問題から東映を離れ、再び日活での出演となっている。
「花咲く乙女たち」は舟木の18枚目のシングルタイトルと同タイトルの映画である。主演は舟木自身で、定時制高校生の役である。ヒロイン役は西尾三枝子で、約1年前の「仲間たち」ではノンクレジット出演だった。彼女も定時制高校生の役だが、職場での同僚役で田代みどり、伊藤るり子、浜川智子(浜かおる)、岡田可愛などが顔を出す。
田代は当時16歳で、60年小6の時に歌手デビューし、同時期に映画デビューもしている。映画はほぼ日活で、吉永小百合との共演が多い。70年にブルーコメッツの三原綱木と結婚しており、72年にヒットした「愛の挽歌」を歌うつなき&みどりは、この夫婦のデュオだ。岡田可愛も当時16歳で、注目されるのはこの年に始まるドラマ「青春とはなんだ」の女生徒役からである。
山内賢がヤクザ役で、その弟分が堺である。舟木は彼等と親しくなり、更生させようと努力した結果、ヤクザから足を洗うのである。他に小池朝雄、金子信雄、菅井一郎などで、谷隼人(当時・岩谷肇)や光川環世(当時・井上清子)もチョイ役で出演している。京ふたり子なる双子の歌手が歌ったりするようだが、確認できるシングルは2枚しかないので、すぐに消えてしまったと思われる。
この年の5月堺の所属するザ・スパイダースが「フリフリ」でシングルデビューしている。

「東京は恋する」も舟木の主演映画で25枚目のシングル曲でもある。共演は和田浩治、伊藤るり子、山本陽子、葉山良二など。ヒロイン役の伊藤は東宝芸能学校からのスカウト入社で、前述の「花咲く乙女たち」はデビュー2作目だった。山本陽子は西尾三枝子や谷隼人とはニューフェイス同期にあたるが、年齢が高かったせいか(西尾より5歳上)当初はあまり役に恵まれていなかった。堺の役は舟木のアルバイト先(広告社)での後輩で、クレジットは珍しく菅井一郎、杉山俊夫、中村是好、桂小金治と共に「トメ」になっている。

「高原のお嬢さん」も舟木の主演映画で31枚目のシングル曲である。当時は毎月のようにシングルが発売されたり、同時に2枚3枚発売されたりしており、65年は計13枚リリースされている。本作のヒロインは和泉雅子で、他に山内賢、葉山良二、西尾三枝子、堀恭子、武藤章生など。堺は舟木のいる農場の使用人であり、人形劇団の一員でもある。で本作には山内の友人としてスパイダースのメンバー全員が登場する。デビュー曲である「フリフリ」の演奏などもあるようだ。ちなみに、当時は裕次郎や小林旭の主演作品に陰りが見え始め、この年の興行収入の1位は本作とのこと。
66年からはスパイダースの活動が本格化してきた影響か堺個人での映画出演は途絶えている。またリーダーの田辺昭知はホリプロの一画に田辺エージェンシーの前身であるスパイダクションを設立してセルフプロデュースを開始している。
66年は田辺昭知とザ・スパイダースとして日活の「青春ア・ゴーゴー」と「涙くんさよなら」、67年も日活の「夕陽が泣いている」に出演。「夕陽が泣いている」はスパイダースの大ヒット曲をタイトルにしており、本人たちの演奏もあるが、主演扱いは山内賢、和泉雅子である。

そして67年8月に初主演映画となる「ザ・スパイダースのゴー・ゴー・向こう見ず作戦」が公開される。。本作では七人全員(田辺、堺、井上順、井上孝之、大野克夫、加藤充、かまやつひろし)の個人名がクレジットされるのである。

ここまでは日活だが、1作だけ東宝の駅前シリーズ「喜劇駅前百年」にも顔を出している。堺のみ「佐山」という役名のある役を貰っているようだ。出演は森繫久彌、伴淳三郎、フランキー堺、三木のり平、淡島千景などである。