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私の好きな映画

cine-ma
2025/03/22 17:37

2025年に観た映画(12) 「TATAMI」

「柔道一直線」がTV放映されたのが1969年6月22日~1971年4月4日だそうなので、当時の私は小学生。必殺技の数々も印象的でしたが、ライバル同士が繰り広げる跳んだり跳ねたり投げ飛ばしたりの激しい闘い≒柔道の魅力だと刷り込まれた結果、その後本物の試合をTVで観てものすごくつまらなく感じてしまった(今も格闘技好きなのはきっとこういう作品にルーツがあるような)。

 

"TATAMI"=畳。これが他のスポーツ、フェンシングとかレスリングとかだったら観に行ってないであろう本作。先ずは導入部の緊張感あるモノクロの映像/カメラワークと音楽で、その世界に引き込まれました。

世界女子柔道選手権にイラン代表として個人戦に挑むホセイニ選手。快進撃を続ける彼女に突き付けられたある決断。
孤立無援のホセイニと、国を挙げて彼女の造反阻止に動くイラン。窮地に陥る彼女を救うべく動き出す運営側との三つ巴の駆け引きが、畳の上のサバイバル戦と交錯する。
試合の模様は少々荒っぽくてスリリングさには欠ける(1回戦から決勝まで1日で8試合とかありえん)ものの、負けたら終わりのトーナメント戦の行方と彼女の決断の行方を観客は見守り続ける。

監督のガイ・ナティーヴはイスラエル人。イラン人で祖国を離れ仏亡命中のザール・アミール・エブラヒミが共同監督を務めている。そして一介の柔道選手が立ち向かう相手はイランの最高指導者。本作に関わったイラン人は全員亡命だそう。作品よりもプロダクション・ノートの方がスリリングだったりもする。

観ている最中は「だったら最初から出場させなきゃいいのに」と素朴に思ったりもしたのですが、現実問題としてイスラエル選手との対戦拒否は何も柔道に限らず、様々な競技で発生している。棄権や意図的な敗退事例は枚挙に暇がなく、その相手国もイランに限った話ではない。実際はこういうケースが生じる事くらい容易に想定される筈で、事前に選手サイドにも通達済みなのではなかろうか。本作で描かれるあまりにも唐突な指示や手段を択ばないイランの非人道的な説得行為は、(過去の実話を基にしているそうですが)この国を糾弾・非難する為に描かれているようにも思えた。

思わず溜息が出てしまうような結末の先に用意されたそのエンディングは、現実世界で現在進行形のこの問題に対する1つの対応事例の紹介のようでもありました。

№12
日付:2025/3/15
タイトル:TATAMI | TATAMI
監督:Guy Nattiv(共同脚本)、Zar Amir-Ebrahimi
劇場名:あつぎのえいがかん kiki スクリーン2
パンフレット:あり(¥900)
評価:5.5

(c)2023 Judo Production LLC. All Rights Reserved
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共同監督でもありイラン・チームの監督ガンバリ役も務めるザール・アミール・エブラヒミは「聖地には蜘蛛が巣を張る」でもイランという国の闇に切り込んでいた。

パンフレット(¥900)

<CONTENTS>
・DIRECTOR'S STATEMENT
・INTRODUCTION
・STORY
・TOURNAMENT BRACKET
・KEYWORD
・SPECIAL INTERVIEW 阿部詩
・COLUMN 1
 抑圧との戦いは続く 古田英毅(eJudo編集長)
・DIRECTOR'S PROFILE
・DIRECTOR'S INTERVIEW
・COLUMN 2
 『TATAMI』に観るイランの政治とジェンダー 中西久枝(同志社大学大学院教授)
・COLUMN 3
 物事の明暗に対する闘いをモノクロの映像が訴求させる 松崎建夫(映画評論家)
・CAST PROFILE
・COLUMN 4
 祖国を愛し、国家と戦った二人 川本三郎(評論家)
・AWARD / REVIEW
・CREDIT

 

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