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フランス映画

Stella
2025/03/25 22:54

究極のフランスのモノクロ・フィルム!

◆はじめに

 フランス映画に限らず、60年代まではモノクロ・フィルムが主流であったが、その後はカラー・フィルムに移行する。あえて、最近の映画作品がモノクロなのには、それなりの訳がある。 いずれも話題を呼んだ秀作3作品を再度観たばかりなので、ご紹介する。1本は以前ネット配信で鑑賞したにもかかわらず、今現在確認ができないので、作品名のみのご案内にとどめる。

 ◆モノクロ(B&W)+Cの作品 

  • 「アーティスト(The Artist)」(2012)

 ミシェル・アザナヴィシウス監督と主演のジャン・デュジャルダンのコンビが、ハリウッド黄金期を舞台に白黒&サイレントのスタイルで描き、2012年のアカデミー賞作品賞に輝いた異色のロマンティック・ストーリー。共演はベレニス・ベジョ。また、劇中で主人公のチャーミングな愛犬を演じたタレント犬アギーの名演も大きな話題となった。

(c)La Petite Reine - Studio 37 - La Classe Americaine - JD Prod - France 3 Cinema - Jouror Productions – uFilm
(c)La Petite Reine - Studio 37 - La Classe Americaine - JD Prod - France 3 Cinema - Jouror Productions – uFilm
  •  「婚約者の友人(Frantz)」(2016)

 フランソワ・オゾン監督の作品。第一次大戦直後のドイツとフランスを舞台に、戦争で婚約者を亡くしたドイツ人女性アンナと、そんな彼女の前に現われた亡き婚約者の友人だという謎めいたフランス人青年との心温まる交流と、青年が抱える秘密と葛藤を、モノクロとカラー映像を織り交ぜミステリアスなタッチで描き出す。主演はピエール・ニネとオーディションで選ばれたパウラ・ベーア。

(c)Mandarin Production - FOZ - X FILME Creative Pool GmbH - Mars Films - France 2 Cinema - Films Distribution
(c)Mandarin Production - FOZ - X FILME Creative Pool GmbH - Mars Films - France 2 Cinema - Films Distribution
  • 「パリ13区 (Les Olympiades, Paris 13e)」(2021)

  ジャック・オーディアール監督が「燃ゆる女の肖像」のセリーヌ・シアマと「ダブル・サスペクツ」のレア・ミシューとの共同脚本で撮り上げたラブストーリー。パリの再開発地区である13区で男女4人の迷える若者たちが織りなす恋愛模様を、美しいモノクロ映像でリアルかつ繊細に描き出していく。出演はルーシー・チャン、マキタ・サンバ、ノエミ・メルラン、ジェニー・ベス。

(c)ShannaBesson (c)PAGE 114 - France 2 Cinema
(c)ShannaBesson (c)PAGE 114 - France 2 Cinema

 ◆それぞれの作品の所感

 「アーティスト」は、テーマがハリウッドのサイレントなので、典型的なフランス映画とはいいがたいが、ミシェル・アザナヴィシウスと、その妻でもあるベレニス・ベジョによる、独特の作品作りの丁寧さが伝わる。後半はトーキーになり活躍するペジョではあるが、いたってサイレントな作りにしているのが面白い。制作は結構大変だったかと思う。ヒット作品を目指したペアで踊る作品も言葉がないにもかかわらずカッコよく、それだけで魅了された愛犬のアギーが、主人を助ける様子や、意思疎通の良さに感銘を受ける。

 「婚約者の友人」はシリアスな作品で、ドイツとパリで繰り広げられるが、フランス通でもあるヒロインが、なくなったフランツと語る部分で、フランス詩でヴェルレーヌの「秋の歌」が引用される(⁺歌曲はかなり短い曲だが、日本でも有名な詩なので歌いがいある)。後半の、ちょっと切ない場面で、ドビュッシーの歌曲がピアノ、ヴァイオリンの伴奏で演奏される。★「モンテクリスト伯」でも活躍中のピエール・ニネではあるが、こういう繊細な作品での演技を観る方が興味深い。

 「パリ13区」の原題Les Olympiadesは、13区南部イタリア広場の南側方面、トルビアック通り南側に位置する高層住宅団地で商業中心地は中華街になる。まったく、新しい国際都市パリの様子が新しい姿で語られる。セックスシーンの描写もすごいが、とにかくおしゃれノエミ・メルランが美しくかっこよいセザール賞作品賞を受賞した「エミリア・ペレス」でもジャック・オーディアール監督の研ぎ澄まされた感性と勢いが感じられる。


◆◆参考作品「ジャック・ドゥミの少年期(Jacquot de Nantes)」(1991)

 夫人であるアニエス・ヴァルダが、90年に白血病で世を去った「シェルブールの雨傘」等のジャック・ドゥミの映画への愛と憧憬に満ちた少年期を愛惜をこめてドラマ化。映画の合間に挿入される晩年のドゥミのフィルムが、失われゆく生の悲痛さを語る。命に満ち溢れた少年の日々の夢との対比は、甘美な輪廻の幻を見せるかのようだ。ドゥミの映画の多くが、自伝的な要素に充ちている様だが、様々な挿話が具体的に何に結びつくかを示唆されると、彼の傑作のスピリットがまざまざと蘇る。

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