Discover us

私の好きな映画

さっちゃん
2023/06/27 09:30

映画館が二本立てだった頃(その2)

さて、その2は80年代に移る。
うち1作はDISCASさんにも在庫がない『ザ・アマチュア』。
もう一本は、出演者でその後、有名になる方の若き日の姿を見ることができる『タップス』である。

当時のポスターのイメージで描いてみました。

ということで、それぞれのご紹介といこう。

まず、『ザ・アマチュア』である。
ポスターの惹句が「プロの暗殺者達の世界にはアマチュアの入り込む余地はない・・・」という刺激的なものだった。
導入部で、ミュンヘンのアメリカ大使館がテロリストに占拠され、要求が拒否されたため、職員の女性サラが見せしめに殺される。
結果、西ドイツ政府は彼らの要求をのみ、犯人たちは国外に脱出する。
CIAのコンピュータ技師であるサラの恋人だったチャーリー・ヘラー(ジョン・サヴェージ)は犯人たちの処分を上司に要求するが認められず、ついに重要機密のデータを盗み出し、自分を工作員として訓練することを要求する。
要求が拒否されれば、その情報をマスコミに暴露すると脅して。

過酷な訓練に耐え、犯人たちが匿われているチェコスロバキアに潜入することに成功する。
素人に毛が生えたようなチャーリーだが、何とか犯人たちの居場所をつきとめ、危ういながら一人、また一人と彼らを殺していく。
しかし、その間にCIAは機密情報の隠し場所をつきとめ、密かに彼を始末するため、彼の訓練教官だったアンダーソン大佐(エド・ローター)をチェコスロバキアに潜入させる。
一方、チェコの情報機関のボス、ラコス教授(クリストファー・プラマー)もチャーリーの行動に気づき、彼の跡を追い始めていた。果たしてチャーリーの運命は・・・。

というところで、あらすじ紹介は以上とさせていただく。

ネタバレになるかどうかギリギリだと思うが、シリアスなエスピオナージュもので、ジョン・ル・カレ原作の『寒い国から帰ったスパイ』、『鏡の国の戦争』に通じる作品と言っておこう。ビターなラストである。

本作がDISCASさんの在庫にないのは、一つには主演のジョン・サヴェージが割と地味な俳優だということも一つの要素なのかなと思うのだが、DVD化されていてもセル・オンリーとか権利関係がややこしいとかいろいろあるのかもしれない。そうでなければ是非、在庫に加えて欲しいものである。

あと、裏話としてチェコの街並みはオーストリアで撮影したそうである。
近い国なので似ているのかもしれない。物語の陰惨さと旧い町並みの美しさが対照的である。
また、本作では旧共産圏の武器がけっこう出ているのである。
冒頭の大使館占拠事件のときもテロリストがチェコスロバキア(当時)製のVz58アサルトライフルを持っているのに気付いた。
これらの銃器はコレクターから借りたものだそうで、道理で一発も発砲しない訳である。

(やはり、この3人か)レンタルはここから

話が逸れてしまった。

続いて『タップス』である。
こちらは米国の陸軍幼年学校を舞台にした、まぁ悲劇である。何だか歯切れの悪い書き方だが、何というのか一言で言い表せないドラマなのである。

主演はティモシー・ハットン、そう、ロバート・レッドフォード初監督作品『普通の人々』の主役でブレイクした若者である。
『普通の人々』も監督を初めてやったレッドフォードのセンスに驚嘆したものだが(と言っても、この作品を観たのはDISCASさんのレビューページで毎月やっている映画会のお題としてなので、あまり大きな顔はできない。)、本作でも彼の演技力は素晴らしい。

そして、脇を固めているのが、若き日のトム・クルーズ、ショーン・ペンなど後にブレイクする面々。
そしてベテランのジョージ・C・スコット、ロニー・コックスなどが彼らを支えている。

物語は、これまで陸軍将校を輩出している陸軍幼年学校が舞台である。
校長ハーラン・ベイシュ将軍(ジョージ・C・スコット)は理事会から廃校を迫られていて(多分、ベトナム戦争に事実上の敗北を喫していて米国民の中にも軍隊や戦争に対する忌避感が増していた時期なので、こういう学校への希望者も減っていたのではないかと思う。
劇中でも廃校の理由として経営難が挙がっていた。)校長はそれに抵抗している。

最上級生になるブライアン・アラモンド(ティモシー・ハットン)は生徒長に任命され、友人のデヴィッド・ショーン(トム・クルーズ)やアレックス・ドワイヤー(ショーン・ペン)らと喜びを分かち合うが、その後、卒業式で1年後の廃校が発表される。
その夜、開かれたパーティの席上に街の若者たちが乱入して生徒たちと争いになる。
それを止めようとした校長の拳銃を若者が奪おうとして発砲してしまい、その若者が死亡する。さらに取り調べを受けていた校長も心臓発作で入院する。

この事件を受けて理事会が廃校を早めようとする。
その事実を知った生徒たちは学校にある武器を奪取して立てこもることになる。
何せ軍隊と同じ武器を持っているため警察も手を出せない。まだ、幼い生徒もいて、その親たちは彼らの解放を求めるが、それをきっかけとして立てこもりの兵力が減ったり崩壊することを恐れる上級生たちは要求を拒否する。
ついには州兵が学校を包囲する事態に至る。

日ごとに幼年学校の生徒たちと州兵との間の緊張が高まる中、ついに犠牲者が出てしまう。
幼い(見かけは小学生くらいに見える)生徒が我慢しきれなくなって校外に抜け出そうとする、そのときに放り出したM16ライフルが暴発してしまう。反射的に発砲する州兵。倒れる生徒。

この事態が発生する前に州兵の指揮官カービー大佐(ロニー・コックス)がブライアンとの交渉のときに彼に言う台詞がある。
多分、彼はベトナムで実戦を経験しているのだろう。「死は醜い。」という短い一言が今でも記憶に残っている。そういう時代の映画なのだ。

そして、遂に投降を決めたブライアンたちだったが、学校を明け渡す日になって最後の、そして最大の悲劇が待っていた。

とまぁ、80年代に入ってのシリアスな二本をご紹介したのだが、この頃、我が国はバブルの入口でずいぶん浮かれていた記憶がある。
文化的にはネアカ、ネクラという言葉が流行っていて、私はと言えば、このように映画を観たりプラモを作ったり小説を乱読したりしてネクラの道をまっしぐらに走ってたのであった。

 

次の、そして最後の二本立ては(その3)に続く。

コメントする