4月10日生まれの男たち その3 和田誠
4月10日生まれの男たち その3 「 画は口ほどにものを言い 」
和田誠 ( 1936 ~ 2019 ) 以下 敬称略
他の3人が饒舌な” 語り部 ”であるのに対し、物静かで口数は少ない。
「 永君はおしゃべりが巧みで集まりの中の花形。 和田君はうつむきかげんでおとなしい 」が淀川長治が少年時代の両者を回想しての印象。
話し好きの妻の平野レミも新婚当時どうしようかととまどうくらい無口だったそうだが、にこやかで穏やかだし、人の話はちゃんと聞く人。
また対談の名著もたくさんあって、話が嫌いでも話がヘタなわけでもない。
ご本人が書いておられるように片耳が難聴だったことも多少あったのかもしれない。
4氏ともマルチな才能を発揮した人だが、和田誠は美術的・視覚的な業績は突出している。
少年時代から映画好きで、映画館に通いつめ、東京映画友の会やディズニーファンクラブに参加していた。
多摩美術大学卒業後、広告制作会社に入社、
仕事とは別にシルクスクリーンの印刷所サイトウプロセスの社長から「 うちは新宿日活名画座のポスターを作っていて、文字情報だけ入っていればいいと言われているが、俺は絵が入るといいと思う。 先方は望んでないから金はでないが、描いてみるか」と言われた。
好きな映画のポスターが描ければ嬉しいと快諾。 以後9年間無償で半月に1本のペースで描いた。
グラフィック・デザイナーとしては、タバコのハイライトのデザインに採用される。
宇野亞喜良、横尾忠則らとともに新しい職業だったイラストレーターのステータスを確立した一人。
雑誌「 話の特集 」のアート・ディレクターとなり、表紙や構成だけでなく、執筆陣との交流も活発に行い、同誌を成功に導く。
後年は週刊文春の表紙を担当。
「 お楽しみはこれからだ 」は映画の名セリフを語り7冊にもなった人気シリーズ本
題名は『 ジョルスン物語 』(1946)のクライマックスでラリー・パークス扮するアル・ジョルスンが言うセリフ「 You ain’t heard nothin’ yet 」の邦訳字幕から。


「 たかが映画じゃないか 」共著の山田宏一との映画談義本
題名は『 山羊座のもとに 』(1949)の撮影で、あれこれ議論しようとするイングリッド・バーグマンにアルフレッド・ヒッチコックが諭して言った「 Ingrid , It‘s only a Movie 」から。


その他著書も多数。 また装丁を行った本も多数。
似顔絵のイラストも本の装丁、CDジャケットからテレビのタイトル画など多いが、
『 かあちゃん 』(2001年 市川崑 )など映画のタイトルに使われたのもあります。
映画監督作品
第1作は『 麻雀放浪記 』 ( 1984年 )


澤井信一郎 と共同脚本
原作 阿佐田哲也 のギャンブル・ハードボイルド。
ベテランの高品格がフィーチャーされ、この年の映画各賞の助演男優賞を総なめにしました。
第2作は『 快盗ルビイ 』( 1988年 ) 脚本・監督


原作はヘンリー・スレッサーのユーモア・ミステリ「 快盗ルビィ・マーチンスン 」
原作では男性の主人公を女性に変え、小泉今日子主演。
1作目のハードボイルドから2作目はおしゃれでかわいい映画。
両作品ともセンスのいい作品。
他に『 怖がる人々 』『 真夜中まで 』の他、アニメ作品など数本の監督作品がある。
ウィキペディアに書かれているように
5万点に及ぶ資料や作品が、母校の多摩美術大学に
蔵書や本棚やテーブルなどが、渋谷区立中央図書館に
レコードや村上春樹関連資料が、早稲田大学村上春樹ライブラリーに
それぞれ寄贈されている。
2023年京都で開催された「 和田誠展 」も盛況でした、
和田誠関連のCD

さらに和田誠について書いたロキュータス名義のレビューはこちら ( 予定 )
シリーズ 4月10日生まれの男たち
その1 永六輔 はこちら
その2 淀川長治 はこちら
その4 さだまさし はこちら