まねできない空気感! 愛すべきヨランド・モローの不思議
◆ヨランド・モローとは?
ベルギー出身のヨランド・モローは、日本ではセザール賞の作品賞と主演女優賞を受賞している「セラフィーヌの庭」(2008)で有名であるが、その前の「アメリ」(2001)でもコンシェルジュ役で顔は知られている。最近では、「セラフィーヌの庭」と同じマルタン・プロヴォ監督の「5月の花嫁学校」(2020)でも、ジュリエット・ビノシュと良い関係で助演をつとめている。
「詩人の花嫁」(2023)は、昨年末の「EUフィルムデーズ2024」で上演されていた様だが、先週3月29日に横浜日仏学院で、フランコフォニーの協会の主催で上映され観る機会があったので、「セラフィーヌの庭」と合わせて、ご紹介する。
この女優さんは、独特のふわっとした空気感をもった素敵な人で、純粋な心根のある役を演じるので、どんな悪い役を演じても、本気で怒ることができず、おとぼけな部分もあるが、全般、観るものを共感させる。
【参考】フランコフォニー(フランス語圏と同義):フランス共和国を含め、フランス語が何らかの形で用いられている国・地域の総称。ヨーロッパでは、ベルギー、スイス等だが、ベルギーでは、オランダ語とフランス語で話し、40%位の人口でフランス語を話すらしい。公用語はドイツ語になる。 |
◆「詩人の花嫁(La Fiancée du Poète)」(2023)
ヨランド・モローが監督した、長編第3弾になる、ベルギーとフランスの合作映画。
故郷に帰ってきたミレーユは、ムーズ河畔にある大邸宅を相続することになる。絵画と詩を愛する彼女は、カフェでウェイトレスとして働きながら、盗みとタバコの転売で生計を立てていた。相続した大邸宅を維持する余裕はなく、孤独を抱えていたミレーユの元に、ある日3 人の男がやってくる。ミレーユは彼らを借家人として迎えることにするが、彼らによってその日常は次第に狂い始めていくが、どこか運命共同体の様な関係になっていく。助演として、「ハリー、見知らぬ友人」のスペインの俳優のセルジ・ロペスや、「オフィサー・アンド・スパイ」や「デリシュ!」のグレゴリー・ガドゥボワが脇を固めているので、作品により深みが増す。この映画自体は、フランスの田舎街が舞台となるが、ベルギーの画家の美術館等も登場する。
◆所感
詩が好きで学士として勉強していたミレーユなので、部屋にはランボーの写真が飾ってあるのは、いかにもである。だまされたり、だましたりしながら、何とか人に嫌われずに過ごしているのが素晴らしい。借家人のピカソと呼ばれた若い男性が上手に描いたミレーユの自画像は、本当に素敵で、思わず、(有名詩人を偽った、過去の恋人の)男性の眼にとまり、再会するシーンは、ある意味、ロマンティックである。[*ネタバレですいません。]
「セラフィーヌの庭」同様に、詩とか、絵画とかをテーマにすることで、ヨランド・モローの情念が高まり、作品全体で、感性が大事にされている様に思う。
どこか哀愁に満ちてはいるが、コミカルに前向きに描かれているのが、ほのぼのとする。


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◆「セラフィーヌの庭(Seraphine)」(2008)
フランスに実在した素朴派の女性画家セラフィーヌ・ルイの生涯を描いた感動のヒューマン・ドラマ。家政婦として貧しく孤独に暮らす傍ら、敬虔にして無垢な心のままに色鮮やかで幻想的な絵を次々と生み出したセラフィーヌと、彼女の才能を見出したドイツ人画商との心の交流を、激動の20世紀初頭を背景に描き出す。マルタン・プロヴォ監督の作品。
1912年、フランスのパリ郊外サンリス。家政婦として生計を立てている貧しく孤独なセラフィーヌ。彼女は草木や花々に話しかけ、植物など自然のもので自ら絵の具を作り、部屋に籠もって黙々と絵を描く日々を送っていた。彼女の働く家にアンリ・ルソーを見出したドイツ人画商ヴィルヘルム・ウーデが引っ越してくる。ウーデは、彼女に援助を申し出るが1914年第一次世界大戦が開戦し、敵国の人となったウーデは止むなくフランスを離れるが、1927年フランスに戻ってきたウーデと再会を果たす・・。
[参考]エンドレスチェア(1866年):ドイツの曲木技術で作られたトーネット社のイスの作品で、パリ万博(1867年)に出品されたもの。2本の材を使って、編むようにして曲げている。右の写真はPLUS社のデザインの講座のワークショップを受講した際の作品になる。エンディングで、セラフィーヌがイスを抱えて、木に向かって歩いていくシーンに触発される。 |
◆参考の投稿
・秋にみたい画家がテーマの映画「画家ボナール ピエールとマルト」
https://community.discas.net/announcements/jmofvieq9rm3r2kj
・「画家ボナール ピエールとマルト」を劇場で鑑賞!
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投稿を表示「アメリ」でみていたのに全くノーマークの役者さんでした 監督までつとめられてる作品、面白そうです☺️