【ネタバレ】苦悩する虐殺者 阻止に奔走する神父 その1
2020年12月3日にロキュータス名義でレビューしましたが、投稿時在庫なしだったので観ることはできませんでした。
DISCASさんで在庫1枚復活しましたので、約40年ぶりに観ることができました。
データによると日本未公開。
そうなら当時、どうして自主上映の会で観ることができたのか。
推測ですが、京都には関西日仏学館、ゲーテ・インスティトゥート(ドイツ)など各国の文化発信施設( かつてはアメリカン・センターも )がありますが、たぶん日本イタリア会館が提供したのでしょう。
当時のタイトルは『 ローマの虐殺 』
原題は『 Rappresaglia 』( 報復 )
( ネタばれあり )
第二次世界大戦終盤、イタリアの独裁者ムッソリーニは失脚・幽閉されますが、ナチ・ドイツは奪還、かいらい政権のトップに据え、実質上ローマを占領支配。
ロベルト・ロッセリーニ『 無防備都市 』にも描かれていますね。
1944年3月23日ドイツの治安部隊と警察はローマ市内を示威行進しますが、パルチザンの爆弾攻撃で32名が死亡。
怒ったヒトラーは、報復の見せしめにドイツ人1人につき10人のイタリア人を殺すらように命令。
ナチ親衛隊ヘルベルト・カプラーは無益なことと苦悩しながら実行に臨む。
一方、事態を知ったピエトロ・アントネッリ神父はカプラーを説得し、阻止に奔走して回るが・・・・
監督はジョージ・P・コスマトスの実質デビュー作。
作家ロバート・カッツが1967年に書いた原作を共同脚本。
両者は1976年『 カサンドラ・クロス 』で原作・脚本と監督として再びタッグを組みます。
監督が無名の新人だったので、予告徧でも前面に名を出しているのは、
『 道 』『 ドクトル・ジバゴ 』『 ひまわり 』などの大プロデューサーのカルロ・ポンティ。
335名のイタリア人市民が虐殺されたアルディアティーネ虐殺の史実をモチーフにしたフィクション。
ネタばれになるが、そう、残念ながら虐殺は止められなかった。
本作の見どころはヘルベルト・カプラーを演じるリチャード・バートンとアントネッリ神父を演じるマルチェロ・マストロヤンニの激突。
バートンの地獄を見る男の眼、マストロヤンニの怒りを持って見据えるまなざし。
共演はレオ・マッカーン(『 わが命つきるとも 』『 ライアンの娘 』 など )ら。
凄惨な内容だし映画としては佳作というのが正直な出来栄えだが、40年僕の頭にイメージが残った幻の作品で、ずっしりと来る渾身の一作とは言えます。
このディスクには英語版とイタリア語版が収録されていますが、言語によって印象が違いますね。
英語版がより叙事的なのに対し、イタリア語版は熱いパッションを感じます。
バートンのイタリア語版は明らかに吹替ですが、マストロヤンニは英語版でもご本人に聴こえます。 実際どうだったかわかりませんが、違いをぜひ聴き比べてみてください。
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さて本作には史実との違い と 後日談があります。
それについては、「 その2 」に続きます。