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LOQ
2023/04/24 10:30

【ネタバレ】その2 史実との違い と 後日談

『 裂けた鉤十字 ローマの最も長い一日 』についてネタばれあり

  その1から続く

 

リチャード・バートンが演じたヘルベルト・カプラーは実在の人物。

本作では苦悩した人物と描かれてますが、実際は職務に忠実・積極的に関与していたようです。

ホロコーストでは、イタリアから2000人を超すユダヤ人を強制収容所に送り、生存者は16人だけとされていて、さらに50キロに及ぶ金を没収略奪に関与。

戦後イギリス軍に逮捕され、イタリアに引き渡され終身刑となります。

 

 マルチェロ・マストロヤンニが演じたアントネッリ神父は架空の人物ですが、2人の人物をミックスしたと考えられています。

 1人はユダヤ人をかくまうなどレジスタンス運動をしていたヒュー・オフラハティ神父。

 戦時中カプラーは暗殺を考えますができませんでした。

 戦後投獄されたカプラーをオフラハティ神父は毎月訪問し、カプラーはカトリックに改宗、洗礼を受けます。

 両者はテレビドラマ「 赤と黒の十字架 」(1983)で描かれ、カプラーをクリストファー・プラマー、オフラハティ神父をグレゴリー・ペックが演じました。

 以前VHSで出ていたようですが、ディスク化されてないようです。

ぼくも未見なので、機会があれば観てみたいです。

 

 もう1人のモデルはピエトロ・パッパガッロ神父で、ロベルト・ロッセリーニ『 無防備都市 』のドン・ピエトロ・ペレグリニ神父( アルド・ファブリ-ツィ )のモデルでもあります。 このアルディアティーネ虐殺で処刑されました。

 

 これらナチに抵抗した神父たちがいる一方で、本作は直接名指ししていないものの、バチカンの無作為・傍観を示唆してると受け止めらたようです。

 原作者ロバート・カッツ、製作のカルロ・ポンティ、監督のジョージ・P・コスマトスローマ教皇ピウス12世の親族から名誉棄損で刑事告発された。

 一審ではカッツが14か月、ポンティとコスマトスが5か月の懲役の有罪判決。

 二審ではポンティとコスマトスは無罪、カッツは懲役と罰金び有罪判決。

 控訴した最高裁で有罪は確認されたが、恩赦により執行されない判決。

 民事訴訟は双方起こさず、10年に及ぶ長い裁判は終了。

 

 終身刑のヘルベルト・カプラーは1970年代ガンとなり病院に移動。

 服役中に支援者として知り合い1972年に結婚した看護師の助けで1977年8月病院から脱走、西ドイツに。 イタリアでは抗議運動が起こり政府は西ドイツに送還を要求するが、カプラーが末期ガンというのもあって西ドイツは拒否。 国際問題となるが、翌78年2月カプラーは自宅で死去。 葬儀には800人が出席したという。

 

 カプラーの部下で虐殺の実行者エーリヒ・プリ―ブケ

 一般にはそれまで無名でしたが、本作( 演じたのはブルック・ウィリアムズという俳優)で描かれたことで存在が知られるようになりました

 

  エーリヒ・プリ―ブケは戦後捕まりますが、イタリアのイギリス軍捕虜収容所から脱走、アルゼンチンへ逃げ、自由の身で以降生活。

 1994年アメリカABCの報道班が追跡して発見、直撃インタビューしたことで世界に生存が知られた。

 身柄拘束されイタリアないしドイツに引き渡すか、すでに80歳の高齢もあって自宅軟禁のまま訴追されるが、裁判は差戻しなど17か月に及ぶ。

 ナチ戦犯の時効を認めない国際協定にアルゼンチンが署名していたため、1996年イタリアに送還。

 

 裁判でプリ―ブケはヒトラーに命じられだけ、従わなければ自分が殺された。元々テロが原因、などと無罪を主張、自責の念も一切表明しなかった。

 イタリアでは一審、二審とも無罪。

 激しい抗議運動が起こるが、再逮捕されることで沈静化。

  最高歳で終身刑となるが、85歳の高齢と健康状態を考慮して、収監されず弁護士の自宅に軟禁。

 

  100歳自然死で死去。 故人はアルゼンチンの妻とともに埋葬を希望したが、アルゼンチン政府は拒否。 ローマのカトリック教会も葬儀を前例のない禁止を決定、ドイツもナチの聖地となる懸念を理由に拒否。 

 ホロコーストを否定しカトリック教会を追放された神父が葬儀を行うことを申し出ますが、支持者と抗議運動で激しく紛糾し、遺族は立ち会えませんでした。

 遺体の棺はイタリア当局が押収、軍基地に運ばれ、埋葬地は秘密にされたとのことです。

 

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