観終わったときに感じたこと
この映画は、私たちが今核の時代のパラドックスに生きているのを改めて伝えている。
原爆はおそろしい。 ヒロシマ・ナガサキのようなことを願い 廃絶を心から求める。
原爆はおそろしい。 ヒロシマ・ナガサキと同じ目に合いたくない。 廃絶のカサから出るのがこわい。
核の抑止力で、冷戦時代核のカサに入った欧米や日本や中国は攻撃されなかった。
しかし核保有国はカサに入っていない国と戦争してきた。
そのことでカサに入ってない国は核を持つか、カサに入ろうとする。
核のある抑止力は、本質は核虐殺力を使った核恫喝力。
そして核戦争になったら、人類は全滅してしまうかもしれない
この核のパラドックスを改めて思い出させた。
でも観終わったとき重いテーマなのに不思議と僕は暗澹たる思いにはなりませんでした。
人を恐れれば 穴二つ
人を責めれば 穴二つ
人を憎めば 穴二つ
人を恫喝すれば 穴二つ
オッペンハイマーは原爆を作り、後世苛まれることになりました。
ルイズ・ストローズはオッペンハイマーにしたことが自分に返ってきました。
それは核保有国も一緒で、核を持つことが自分に返ってくる。
函を開けて世界に災いをまき散らせてしまい、打ちひしがれて泣く少女パンドラの前に、最後に函から現れたのは希望。
『 ダークナイト 』でジョーカーは犯罪者を護送する船と逃げる市民を乗せた船の双方に爆弾を仕掛け、他方の船を爆破するスイッチを押せば助かると脅すが、成功しない。
けげんな顔をするジョーカーに、バットマンは「 誰しも心の奥底は醜いと? お前だけだ 」と言う。
今の世界は悪循環でどんどん悪くなるけど、
それでもそんな脚本を書いたクリストファー・ノーランは人間を信じているのでしょう。
本作のラストシーンで暗澹たる思いにならず、むしろ何か感動を覚えたのは、
クリストファー・ノーランに敬意と信頼を感じたためと思います。
これはもう、スタンディング・オベーションでしょう。