新書「ヌーヴェル・ヴァーグ」のご紹介と、私のN・V感!
◆はじめに
以前ご紹介した「永遠の映画大国 イタリア名画120年史」の著書の古賀太氏が、1か月前に新書「ヌーヴェル・ヴァーグ」を、同じ集英社から上梓されたので、フランス映画のページとして、概要や、私自身のN・V感をお伝えする。(書籍でもN・Vと略記される)
◆ヌーヴェル・ヴァーグとは?
きっかけとしては、1959年のカンヌ国際映画祭で、レクスプレス(L’express)誌に、『新しい波』の映画をパリのあちこちで見られると記載されたことで、この分野がフランス以外にも広がるきっかけになったとされる。トリュフォーの「大人は判ってくれない」は、カンヌの監督賞を受賞している。
他の文献でも説明される通り、ゴダール、トリュフォー、シャブロル、リヴェット、ロメール等のカイエ(右岸)派と、アラン・レネ、アニエス・ヴァルダ、クリス・マルケル等の左岸派の監督が代表的である。
◆著書の感想
日本における松竹ヌーヴェル・ヴァーグ等についても示されているが、私には邦画の知識はないが、ご興味のある方は、参照されたい。全般、詳細の記載があるので、あらためてフランス映画を鑑賞する役立ちになる。
●第3章 ヌーヴェル・ヴァーグの開花 ヌーヴェル・ヴァーグの特長として、ミシェル・マリが脚本から仕上迄において、作家主義、即興演出、ロケの多用、素人の起用等の8つの立場を挙げていることが引用されている。低予算で作成できる利点があるが、もう一点、娯楽から芸術鑑賞へと鑑賞者の目的が移ったのは特長的といえる。(映画内映画等も、個人的に興味深いテクニックである。) ●第5章 ポスト・ヌーヴェルヴァーグの監督たち 第5章で、ヌーヴェル・ヴァーグの後継者としてジャン・ユスターシュ等5名以上が紹介されているが・・・。そもそもの終焉は5月革命の1968年位なのだろうか? 日本では、フランス映画社のお蔭で、ゴダール、トリュフォー、シャブロル等の紹介がされてきたことも貢献しているが、それ以降の映画が流通されてない状況は、やや気になるところ。 ●第7章 西欧に広がるヌーヴェル・ヴァーグ ゴダール、トリュフォーがイタリアのロベルト・ロッセリーニの影響を受けたこと、改めて新鮮に思った。イタリアでは、パリで夏休みを過ごしたベルナルド・ベルトルッチは影響を受けたと思う。「革命前夜」(1964)や、最近の「ドリーマーズ」(2003)も興味深い。 またニュー・ジャーマン・シネマのドイツのライナー・ヴェルナー・ファスヴィンダ-等はまだ良くわからないが気になるところ。 ソルボンヌ大学で学んだギリシャのテオ・アンゲロプロスは、他に類似をみない作品制作を手掛け、全般難解だが、今、個人的にはまっている。会話はあるが、全くドラマ性がなく、非日常が綴られる。しかしながら映像美は美しい。 第8章ではポーランドのことも示され、ロマン・ポランスキーについても記載される。
★同じ欧州大陸に広がるN・Vは、強い個性を持ち、パリでも影響を受けた担い手が、それなりの成果を示してきたのかと思い、感慨深い。 |
◆私のN・V感(N・V ベスト作品)
他に類似するものがないとか、映画内映画の引用、ジャズやワーグナー等のクラシック音楽の引用等の点で、私見だが、気になるN・V性の高い作品をご紹介する。当初からベストと思ってはいなかったが、この間の鑑賞活動を通して、印象がかわったものもある。またアレン・レネの最初の短編「ヴァン・ゴッホ」 (1948)は、最近観る機会はあったのに逃したのが残念。ルイ・マルはどの分野にも違った作品を制作する力量はあるが、自分の中ではN・Vの作家とは思っていない。
各作家の作品を、下表で順番にご紹介する。(画像は、All CinemaとDiscasの情報を引用。)
●フランソワ・トリュフォー
「大人は判ってくれない(Les Quatre cents coups)(1959)
「突然炎のごとく(Jules et Jim)」(1962)
「アメリカの夜(La Nuit américaine)」(1973)
●ジャン=リュック・ゴダール
「勝手にしやがれ(À bout de souffle)」(1960)
「軽蔑(Le Mépris)」(1963)
「はなればなれ(Bande à part) 」(1964)
●クロード・シャブロル
「いとこ同志(Les Cousins)」(1959)
●アラン・レネ
「二十四時間の情事(Hiroshima mon amour)」(1959);原題『ヒロシマ・モナムール』
「去年マリエンバートで(L'Année dernière à Marienbad)」(1961)
●アニエス・ヴァルダ
「ラ・ポワント・クールト(La Pointe Courte)」(1955)
「5時から7時までのクレオ(Cleo de 5 a 7)」(1961)
●クリス・マルケル
「ラ・ジュテ(La Jetée)」(1962)
▲ロマン・ポランスキー
「水の中のナイフ(Nóż w wodzie)」(1962)
▲ベルナルド・ベルトルッチ
「革命前夜(Prima della rivoluzione)」(1964)
「ドリーマーズ(I sognatori)」(2003)
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