フランス映画

Stella
2025/05/18 17:04

新書「ヌーヴェル・ヴァーグ」のご紹介と、私のN・V感!

◆はじめに

 以前ご紹介した「永遠の映画大国 イタリア名画120年史」の著書の古賀太氏が、1か月前に新書「ヌーヴェル・ヴァーグ」を、同じ集英社から上梓されたので、フランス映画のページとして、概要や、私自身のN・V感をお伝えする。(書籍でもN・Vと略記される)

◆ヌーヴェル・ヴァーグとは?

 きっかけとしては、1959年のカンヌ国際映画祭で、レクスプレス(L’express)誌に、『新しい波』の映画をパリのあちこちで見られると記載されたことで、この分野がフランス以外にも広がるきっかけになったとされる。トリュフォーの「大人は判ってくれない」は、カンヌの監督賞を受賞している。

 他の文献でも説明される通り、ゴダール、トリュフォー、シャブロル、リヴェット、ロメール等のカイエ(右岸)派と、アラン・レネ、アニエス・ヴァルダ、クリス・マルケル等の左岸派の監督が代表的である。

著書の感想

 

 日本における松竹ヌーヴェル・ヴァーグ等についても示されているが、私には邦画の知識はないが、ご興味のある方は、参照されたい。全般、詳細の記載があるので、あらためてフランス映画を鑑賞する役立ちになる。

 

●第3章 ヌーヴェル・ヴァーグの開花

 ヌーヴェル・ヴァーグの特長として、ミシェル・マリが脚本から仕上迄において、作家主義、即興演出、ロケの多用、素人の起用等の8つの立場を挙げていることが引用されている。低予算で作成できる利点があるが、もう一点、娯楽から芸術鑑賞へと鑑賞者の目的が移ったのは特長的といえる。(映画内映画等も、個人的に興味深いテクニックである。)

●第5章 ポスト・ヌーヴェルヴァーグの監督たち

 第5章で、ヌーヴェル・ヴァーグの後継者としてジャン・ユスターシュ等5名以上が紹介されているが・・・。そもそもの終焉は5月革命の1968年位なのだろうか?

 日本では、フランス映画社のお蔭で、ゴダール、トリュフォー、シャブロル等の紹介がされてきたことも貢献しているが、それ以降の映画が流通されてない状況は、やや気になるところ。

●第7章 西欧に広がるヌーヴェル・ヴァーグ

 ゴダール、トリュフォーがイタリアのロベルト・ロッセリーニの影響を受けたこと、改めて新鮮に思った。イタリアでは、パリで夏休みを過ごしたベルナルド・ベルトルッチは影響を受けたと思う。「革命前夜」(1964)や、最近の「ドリーマーズ」(2003)も興味深い。

 またニュー・ジャーマン・シネマのドイツライナー・ヴェルナー・ファスヴィンダ-等はまだ良くわからないが気になるところ。

 ソルボンヌ大学で学んだギリシャテオ・アンゲロプロスは、他に類似をみない作品制作を手掛け、全般難解だが、今、個人的にはまっている。会話はあるが、全くドラマ性がなく、非日常が綴られる。しかしながら映像美は美しい。

 第8章ではポーランドのことも示され、ロマン・ポランスキーについても記載される。

 

★同じ欧州大陸に広がるN・Vは、強い個性を持ち、パリでも影響を受けた担い手が、それなりの成果を示してきたのかと思い、感慨深い。

◆私のN・V感(N・V ベスト作品)

 他に類似するものがないとか、映画内映画の引用、ジャズやワーグナー等のクラシック音楽の引用等の点で、私見だが、気になるN・V性の高い作品をご紹介する。当初からベストと思ってはいなかったが、この間の鑑賞活動を通して、印象がかわったものもある。またアレン・レネの最初の短編「ヴァン・ゴッホ」 (1948)は、最近観る機会はあったのに逃したのが残念。ルイ・マルはどの分野にも違った作品を制作する力量はあるが、自分の中ではN・Vの作家とは思っていない。

 各作家の作品を、下表で順番にご紹介する。(画像は、All CinemaとDiscasの情報を引用。)

 ●フランソワ・トリュフォー

「大人は判ってくれない(Les Quatre cents coups)(1959)

「突然炎のごとく(Jules et Jim)」(1962)

「アメリカの夜(La Nuit américaine)」(1973)

●ジャン=リュック・ゴダール

「勝手にしやがれ(À bout de souffle)」(1960)

「軽蔑(Le Mépris)」(1963)

「はなればなれ(Bande à part) 」(1964)

●クロード・シャブロル

「いとこ同志(Les Cousins)」(1959)

●アラン・レネ

「二十四時間の情事(Hiroshima mon amour)」(1959);原題『ヒロシマ・モナムール』

「去年マリエンバートで(L'Année dernière à Marienbad)」(1961)

●アニエス・ヴァルダ

「ラ・ポワント・クールト(La Pointe Courte)」(1955)

「5時から7時までのクレオ(Cleo de 5 a 7)」(1961)

●クリス・マルケル

「ラ・ジュテ(La Jetée)」(1962)

▲ロマン・ポランスキー

「水の中のナイフ(Nóż w wodzie)」(1962)

▲ベルナルド・ベルトルッチ

「革命前夜(Prima della  rivoluzione)」(1964)

「ドリーマーズ(I sognatori)」(2003)

 

 ◆関連の投稿

・女性監督アニエス・ヴァルダの活動のアートの世界 「アニエスによるヴァルダ」

https://community.discas.net/announcements/0vwjx6pppzsyhm1i

・フランス映画のポスター 大好き!

https://community.discas.net/announcements/mv0tuyihz12rpn0k

・ヌーヴェル・ヴァーグ 「大人は判ってくれない 」(1959)

https://community.discas.net/announcements/by0lm7m9gq0fkiul

・愛すべき♪シネマ・フランセ・コーナーは ミックスド・メディアで!

https://community.discas.net/announcements/1ijbsnkog6csi4vb

・4/19~5/9 ジャック・リヴェット傑作選「パリでかくれんぼ(Haut bas fragile)」等

https://community.discas.net/announcements/lwr6rt2ysvmdwghf

・ジャンヌ・モローの「突然炎のごとく(Jules et Jim)」

https://community.discas.net/announcements/gaqn8b7ipgablsy0

・祝!No.100の投稿 好き映画は?(ロマン・ポランスキー)

https://community.discas.net/announcements/tovrmsgkdupllqbk

・❤クイズで始まる2025 フランス映画のタイトルと地名、教えて!

https://community.discas.net/announcements/ilhanzn7d8xy5tvb

・ライナー・ヴェルナー・ファスヴィンダーとハンナ・シグラ

https://community.discas.net/announcements/4vvksgdjg88gwecv

・イタリア映画研究家は、フランス短期留学時の知り合いだった!

https://community.discas.net/announcements/nf3jkidyq0xejxy8

・Discas 1330枚達成!(テオ・アンゲロプロス)

https://community.discas.net/announcements/md3xusl3lo0lwm6t

 

コメントする