今年50回目のフランスのアカデミー賞にあたるセザール賞受賞作品をウォッチ ❤気になる作品教えて!
◆セザール賞
セザール賞 (César du cinéma français) は、フランスにおける映画賞で、同国における米アカデミー賞にあたる。 1975年にジョルジュ・クラヴァンヌによって、米アカデミー賞に匹敵する賞を導入してフランス映画の振興を図る目的で設立された。「セザール賞」という名前は、クラヴァンヌの友人の彫刻家セザール・バルダッチーニにちなみ、受賞者に与えれレるのはセザールが作成したトロフィー。 映画芸術技術アカデミーの会員によって選出される。投票権者は約4,000人で、俳優や記者など12の職業分野から成る。1月にノミネートが発表されノミネート作品は1月に上映される。授賞式は毎年2月、前年公開された映画を対象に行われ、Canal+でテレビ放映される。 今年は第50回目でもあり、興味津々。1月29日にノミネートの発表を控え、まさに旬なトピックである。2月28日にカトリーヌ・ドヌーブ審査員長によりオリンピア劇場で式典が行われるもよう。 |
◆セザール賞をウォッチ
これまでの最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀主演男優賞、最優秀主演女優賞を最近の10年位のものを挙げる。エイズを取り上げた「BPM ビート・パー・ミニット」や、「レ・ミゼラブル」等の貧困問題等の社会課題を取り上げた作品も、結構目立つ。
なお、最後に、これまで投稿した記事でセザール賞受賞作品のご紹介に加えて、昨年の「落下の解剖学」に及ばず、音楽賞、撮影賞、音響賞等の5部門を受賞した「動物界」についても、合わせてご紹介する。
フランスで開催される映画の賞としては、世界三大映画祭であるカンヌ国際映画祭の方がメジャーで商業的な価値も高く最高賞のパルム・ドール(黄金のヤシ)はステイタスの高いロゴになっている。
少し地味ではあるが、セザール賞の方も、今年の候補では、ミシェルルグランのドキュメンタリー、サラ・ベルナールをサンドリーヌ・キベルランが主演したもの、メラニー・ローランがマリーアントワネットを主演したものなど、個人的に観たい作品もあり、ノミネートの結果が楽しみである。
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◆これまでの受賞について
◆最優秀作品賞 1976年(第1回):『追想』(監督:ロベール・アンリコ) 1977年(第2回):『パリの灯は遠く』(監督:ジョセフ・ロージー) 1978年(第3回):『プロビデンス』(監督:アラン・レネ) 1979年(第4回):『銀行』(監督:クリスチャン・ド・シャロンジェ) 1980年(第5回):『テス』(監督:ロマン・ポランスキー) ――――――― 1988年(第13回):『さよなら子供たち』(監督:ルイ・マル) 1989年(第14回):『カミーユ・クローデル』(監督:ブリュノ・ニュイッテン) 1990年(第15回):『美しすぎて』(監督:ベルトラン・ブリエ) 1991年(第16回):『シラノ・ド・ベルジュラック』(監督:ジャン=ポール・ラプノー) 1992年(第17回):『めぐり逢う朝』(監督:アラン・コルノー) 1993年(第18回):『野性の夜に』(監督:シリル・コラール) 1994年(第19回):『スモーキング/ノースモーキング』(監督:アラン・レネ) 1995年(第20回):『野性の葦』(監督:アンドレ・テシネ) 1996年(第21回):『憎しみ』(監督:マチュー・カソヴィッツ) 1997年(第22回):『リディキュール』(監督:パトリス・ルコント) 1998年(第23回):『恋するシャンソン』(監督:アラン・レネ) 1999年(第24回):『天使が見た夢』(監督:エリック・ゾンカ) 2000年(第25回):『エステサロン/ヴィーナス・ビューティ』(監督:トニー・マーシャル) 2001年(第26回):『ムッシュ・カステラの恋』(監督:アニエス・ジャウイ) 2002年(第27回):『アメリ』(監督:ジャン=ピエール・ジュネ) 2003年(第28回):『戦場のピアニスト』(監督:ロマン・ポランスキー) ――――――― 2013年(第38回):『愛、アムール』(監督:ミヒャエル・ハネケ) 2014年(第39回):『不機嫌なママにメルシィ!(英語版)』(監督:ギヨーム・ガリエンヌ) 2015年(第40回):『禁じられた歌声(英語版)』(監督:アブデラマン・シサコ) 2016年(第41回):『FATIMA(英語版)』(監督:フィリップ・フォコン) 2017年(第42回):『エル ELLE』(監督:ポール・バーホーベン) 2018年(第43回):『BPM ビート・パー・ミニット』(監督:ロバン・カンピヨ) 2019年(第44回):『ジュリアン』(監督:グザヴィエ・ルグラン) 2020年(第45回):『レ・ミゼラブル』(監督:ラジ・リ) 2021年(第46回):『ADIEU LES CONS』(監督:アルベール・デュポンテル) 2022年(第47回):『幻滅』(監督:グザヴィエ・ジャノリ) 2023年(第48回):『12 日の殺人』(監督:ドミニク・モル) 2024年 (第49回) :『落下の解剖学』(監督:ジュスティーヌ・トリエ) |
◆最優秀監督賞 2015年(第40回):アブデラマン・シサコ(『禁じられた歌声(英語版)』) 2016年(第41回):アルノー・デプレシャン(『あの頃エッフェル塔の下で』) 2017年(第42回):グザヴィエ・ドラン(『たかが世界の終わり』) 2018年(第43回):アルベール・デュポンテル(『天国でまた会おう』) 2019年(第44回):ジャック・オーディアール(『ゴールデン・リバー』) 2020年(第45回):ロマン・ポランスキー(『オフィサー・アンド・スパイ』) 2021年(第46回):アルベール・デュポンテル(『ADIEU LES CONS』) 2022年(第47回):レオス・カラックス(『アネット』) 2023年(第48回):ドミニク・モル (『12 日の殺人』) 2024年(第49回) :ジュスティーヌ・トリエ(『落下の解剖学』) ◆最優秀主演男優賞 2015年(第40回):ピエール・ニネ(『イヴ・サンローラン』) 2016年(第41回):ヴァンサン・ランドン(『ティエリー・トグルドーの憂鬱』) 2017年(第42回):ギャスパー・ウリエル(『たかが世界の終わり』) 2018年(第43回):スワン・アルロー(『ブラッディ・ミルク』) 2019年(第44回):アレックス・ルッツ(『ギイ』) 2020年(第45回):ロシュディ・ゼム(『ダブル・サスペクツ』) 2021年(第46回):サミ・ブアジラ(『Un fils』) 2022年(第47回):ブノワ・マジメル(『愛する人に伝える言葉』) 2023年(第48回):ブノワ・マジメル(『Pacifiction – tourment sur les iles』) 2024年(第49回):アリエ・ヴォルタルター(『ゴールドマン裁判』) ◆最優秀主演女優賞 2015年(第40回):アデル・エネル(『Love at First Fight』) 2016年(第41回):カトリーヌ・フロ(『偉大なるマルグリット』) 2017年(第42回):イザベル・ユペール(『エル ELLE』) 2018年(第43回):ジャンヌ・バリバール(『バルバラ ~セーヌの黒いバラ~』) 2019年(第44回):レア・ドリュッケール(『ジュリアン』) 2020年(第45回):アナイス・ドゥムースティエ(『アリスと市長』) 2021年(第46回):ロール・カラミー(『セヴェンヌ山脈のアントワネット』) 2022年(第47回):ヴァレリー・ルメルシェ(『ヴォイス・オブ・ラブ』) 2023年(第48回):ヴィルジニー・エフィラ(『Revoir Paris』) 2024年(第49回) :サンドラ・ヒュラー(『落下の解剖学』) |
◆◆ 気になる2作品を抜粋
今回は、2017年と2018年の監督賞の受賞作品について、ご紹介し、感想を述べることにする。
◆「たかが世界の終わり(Juste la fin du monde)」(2017年)
グザヴィエ・ドラン監督が、38歳の若さでこの世を去った劇作家ジャン=リュック・ラガルスの戯曲をメジャーなキャストのドラマで描いたカナダとフランスの合作映画。自らの死を告げるため帰郷した34歳の主人公と、それを迎える家族の葛藤と、不器用ゆえの切ない心のすれ違いを緊張感あふれる筆致で描く。主演はギャスパー・ウリエルで主演男優賞も獲得した。共演にナタリー・バイ、レア・セドゥ、ヴァンサン・カッセル、マリオン・コティヤール。
人気作家のルイは12年ぶりに帰郷し、疎遠にしていた家族と久々に顔を合わせる。目的は不治の病に冒され死期が迫っていることを伝えるため。幼い頃に別れたきりの妹シュザンヌは兄との再会に胸躍らせ、母マルティーヌは息子の大好きな料理で歓迎する。一方、兄のアントワーヌは刺々しく、その妻カトリーヌは初対面の義弟に気を遣いつつも戸惑いを隠せない。食事を囲み無意味な会話が続き、なかなか帰郷の目的を打ち明けられないルイだった。

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❤所感
若いグザヴィエ・ドランは今を時めく多才な映画人であるが、「マイ・マザー」でも早口でまくし立てる演技が得意だが、アントワーヌの一方的なトークも暴力的で、母も妹も、またミスキャストと思われる嫁も、ルイとは心を交わすことができないやり取りで終始する。そんな中、母が香水をつけ息子にかいでもらい抱き合っているシーンのみが夢心地な気分になり、花柄のカーテンがゆれているシーンも素敵で、かすかな歓びと思えた。★とはいえ結局、この家族に限らず、それぞれが住む世界は変わらないのだといいたいのだろう。
◆「天国でまた会おう(Au revoir la-haut)」(2018年)
フランスの人気ミステリー作家ピエール・ルメートルが第一次世界大戦直後のパリを舞台に、2人の帰還兵が辿る数奇な運命を描いた同名ベストセラーを、ルメートル自ら脚本を手掛けて映画化し、セザール賞で監督賞・脚色賞を含む5部門を受賞した。年の離れた主人公たちの友情と、彼らが国家を相手に企てる大胆不敵な詐欺計画の顛末を、ペーソスを織り交ぜシニカルに綴る。主演はナウエル・ペレス・ビスカヤールと本作の監督を務めるアルベール・デュポンテル。共演にメラニー・ティエリー等。
1918年休戦目前の西部戦線。上官であるプラデル中尉の悪事に気づいたために生き埋めにされたアルベールは、若い兵士エドゥアールに助けられ九死に一生を得る。しかしその際、エドゥアールは顔に重傷を負う。仕事も恋人も失ったアルベールは、家に戻りたくないというエドゥアールの願いを聞き入れ、彼の戦死を偽装し身分を偽り2人で暮らし始める。顔の一部を失ったエドゥアールは芸術的才能を発揮し美しいマスクを作る。そんな中、困窮を極める2人は、やがてある壮大な詐欺計画を企てる。
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❤所感
映画のパッケージの画像がシュールすぎて、随分前から見かけていたが借りて観ることはなかった。今回はセザール賞受賞作品ということで、まだ知らない作品をざっと鑑賞してみた中の一つの作品だった。ところが鑑賞するとファンタジックで、とても暖かい気持ちになれる貴重な作品であった。アルベール・デュポンテルは、「地上5センチの恋心」でカトリーヌ・フロと共演している俳優として知っていたが、いい味を出していると思う。アルゼンチン出身のナウエル・ペレス・ビスカヤールも個性的で、デュポンテルの恋人役のメラニー・ティエリーも助演女優賞にノミネートされていたが可愛い演技が光る。バランスの良いキャスティングである。
作品のストーリーがわかると、映画のジャケットの画像デザインが自然に理解できる。
◆受賞作品他の紹介記事
1980年:『テス』
https://community.discas.net/announcements/aapsh5bgxoqpulf1
1988年:『さよなら子供たち』
https://community.discas.net/announcements/xgg8du2zzshapuxx
1990年:『美しすぎて』
https://community.discas.net/announcements/xgg8du2zzshapuxx
1992年:『めぐり逢う朝』
https://community.discas.net/announcements/9dktzkz6kcq9n43y
2002年:『アメリ』
https://community.discas.net/announcements/pb60tvbmifeecgde
2003年:『戦場のピアニスト』
https://community.discas.net/announcements/4betjcyik85quzsg
2013年:『愛、アムール』
https://community.discas.net/announcements/8nw8q1w7amfokah4
2015年:『イヴ・サンローラン』
https://community.discas.net/announcements/ox93xnlo8wrfp7re
2016年:『偉大なるマルグリット』
https://community.discas.net/announcements/k5ge6o8bxtba5vi3
2022年:『幻滅』
https://community.discas.net/announcements/xgg8du2zzshapuxx
https://community.discas.net/announcements/0c1y9coxdqzml5dk
2024年:『落下の解剖学』
https://community.discas.net/announcements/9dktzkz6kcq9n43y
2024年:『動物界』(ノミネート)
https://community.discas.net/announcements/ogpznlytzpn7htox
❤ 最後に
ここに挙げた、作品賞、監督賞、主演男優賞、主演女優賞に限らず、どこかの部門の受賞でも、ノミネート作品でも構いませんので、気になるセザール受賞作品他があれば、教えて下さい。
★ 長い記事になりましたが、お楽しみ頂けたら嬉しいです。
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投稿を表示「さよなら子供たち」ずっとみたいと思っていますが、ナチスがでてくる作品はみるのに勇気が要り、ついみないでおりました😅 しかし気になりますね・・!